はじまりのアリス


みんなはどうなっただろう。


正人に日野沢。そして諏訪野……。

みんなの無事を祈りたいけど、この状況じゃやっぱり悪い方ばかりに考えがいってしまう。


……どうしたらいいんだ?

どうすればこのゲームを……。


「ねえ、潤。このままふたりで眠れたらいいのにね。もう嫌。疲れたよ。逃げるのも追いかけるのも……」


美織がはじめて涙を流した。

ずっと気丈に振る舞っていたけど、美織の体力も精神も限界に近づいてきている。


「……私、潤だけは失いたくない。大切だもん。
なによりも誰よりも潤が大好きだからっ」

目にたくさんの涙を溜めて俺の洋服をギュッと掴む。


その姿に俺は唇を噛みしめて美織を抱きしめた。

それは強く、痛いくらいに。


「俺も好きだ。なによりも誰よりも。世界で一番」

そう言って俺は美織にキスをした。


まるでこれが最後かのように、何度も何度も唇を重ねて。

このままふたりで溶けてしまえたらどんなに幸せだろうか。

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