はじまりのアリス
――と、その時。
ガタッと物音が廊下に響いた。
不安そうな美織を背中で隠して、俺はそっと壁から顔を出した。そこにいたのはよろよろと歩く人影。
「す、諏訪野……!」
それは死神でもアリスでも部位たちでもなく、
洋服を血まみれにした諏訪野だった。
「だ、大丈夫か?」
俺を見るなりもたれ掛かるように倒れた諏訪野を非常階段の下へと運び、壁にゆっくりと背中を付けて座らせた。
「……し、死神は……?」
諏訪野の第一声はそれ。
「……見つけた。でも鍵はまだ……」
「そうか……」
こんなに血だらけで諏訪野は戦ってきたのに、
鍵さえ奪えなかった自分が情けなくて悔しい。
「諏訪野くん大丈夫っ?」
美織が身体に触れるとすぐに諏訪野は「痛っ……」と顔を歪ませた。