はじまりのアリス
「そっかあ。ボロボロか……。汚いのは欲しくないから、うーん。じゃあ新しいきみで」
アリスが次に浮かせたのは調理用のナイフや鋭く尖ったアイスピック。
この家庭科室は調理実習でも使ったりするから、アリスにとって武器になるものは沢山ある。
アリスが右手を払うような仕草をするとナイフは右に旋回して、左手を払うと今度はアイスピックが左旋回で正人に向かっていった。
「おい、やめろ……っ!」
俺が叫ぶと、グサリと鈍い音。
ナイフはうまく避けて壁に刺さった。
だけどアイスピックは正人の左の太ももへ。
「ちょっと動かないでよ。狙いがズレちゃったじゃない!」
アリスは口を膨らませて、もう一度アイスピックで正人を狙う。
「……約束が違うっ!」
そう声を上げたのは日野沢だった。