はじまりのアリス


……約束……?

みんなその言葉に首を傾げた。


日野沢は壁に突き刺さったナイフを抜いて、それをアリスへと投げつけた。

もちろん簡単にかわされてしまいガシャンッと虚しい金属音だけが家庭科室に響く。


「約束を守れば正人は傷つけないって言ったでしょ!」

日野沢がアリスを睨み付ける。

いつも冷静で動じない日野沢の必死な顔。それを見てアリスがクスリと笑った。


「ああ、痛くしたから怒ってるのね?それじゃ、次は痛くしないわ。貴女と一瞬にブスリとひと刺しで逝かせてあげる」

「……っ。約束したじゃない!私が黙っていれば……私が本物のアリスのことを話さなければ正人だけは殺さないって!」


そうやって繰り返すゲームに付き合ってきた、と日野沢は声を荒らげた。

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