はじまりのアリス


中は暗闇で放送する為の機材やマイクがあるだけで人はいなかった。  


「なんだよ。篠原(しのはら)。急にでけー声出してんじゃねーよ」

諏訪野が俺を睨んでいる。


だれもいない……。

だけど確かに壁にはドアを開けるなと書かれている。


誰が書いたかも分からない、もしかしたら犯人が困惑させる為にわざと書いたかもしれないのに。

その文字には従わないとダメだって、心がうるさい。


「もしかして録音したやつを流してただけで、最初からここにはいなかったんじゃ……」

誰もいないことに安心したのか田上が放送室の中へと入る。


「つーか、そもそも校舎に犯人がいるのか?仲間を用意するとかいってここに来るまで誰も……」


――その時。

バサッと放送室の天井から長い髪の毛が落ちてきて、それは逆さまに宙吊りになった〝人〟だった。

その人はニタッと笑って、そのまま田上を上に引っ張っていく。


それは一瞬で、わすが3秒の出来事。

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