はじまりのアリス
有栖川がベランダから落ちたあの日も、みんなで有栖川をからかっていて。
前の授業で抜き打ちの小テストがあったことさえ、疫病神がいるからだと有栖川のせいにしてた。
「ねえ、こんな気味の悪い人形がいるからいけないんじゃないの?」と今村が有栖川の手の中から人形を奪い取った。
それが川島、横田の順番で回って。
「まじキモい。触れない~」と言いながら人形は次々とクラスメイトたちに回された。
「はいパス」
「ちょ、こえーからやめろよ」
「うわ、まじで気持ち悪いんだけど」
「もしかして洋服も手作り?ヤバくない?」
「だれか精神科紹介してやれよ」
「こんなの持ち歩いて喋ってるとか痛すぎ」
「頭沸いてんじゃないの?」
みんなケラケラと笑いながら人形をほいほいと飛ばして、着ていたワンピースがふわりと宙に浮いていた。
「返して。お願い……!」
有栖川が人形を必死で追いかけていたけど、それをもてあそぶようにみんな面白がっていた。