極道に愛された、氷と炎の女の物語。(仮)
「失礼します。」
戸を開ける。
「すまない、琴葉ちゃん。言わない約束だったが言ってしまった…」
いいですよ。そう思って笑顔で首を振る。
「琴葉…。子供がいるって本当か?」
声が小さい。
「うん。言わなくてゴメン。」
素直に笑えない。
この子が居るとやっぱりダメだろうか。
そう思うと涙が出てきた。
「琴葉……」
涙を拭って剛を見る。
「…ありがとな。」
そう言ってそっと抱きしめてくれた。
「お前が辛い時側に居てやれなくてごめん。」
耳元で聞こえる剛の声。
辛かった。何度も泣きたかった。
悪阻も酷くて、赤ちゃんは大丈夫だろうか。と毎日思った。
眠れなかったこともたくさんある。
剛を思い出して泣いたこともある。
「会いたかった…。寂しかった。この子が剛の迷惑になるんじゃないかって、不安だった、…!」
剛は、泣く私をずっと抱きしめててくれた。
「ありがとう。本当に感謝してる。」
耳元で囁かれて、わたしは安心した。