沈黙


…え?
ああ、もちろん聞いていましたよ。
そうですね。

そうやって情報は世界中へ広がっていくのですよね。

私もそうして情報を得る弱者の一人です。
そうして世界のことを知った気になっています。
今、ここに、私の前にいる、あなたのことも、ろくに知らないのに。


ときたま、こう思うのです。
私は、網にかかった魚。大きな大きな網に引っかかり、そこに一緒にかかった魚達を見て、海を知った気になっている。
そう私は、愚かな魚です。
自分が棲むのは海のたった一部なのに、そうやって他から提供されたあやふやな情報を見て、海の全てを知るのです。


こんな私を、あなたは愚かだと思うのでしょうか。憐れだと思うのでしょうか。そんないちいち細かいことをこの女はと、気味悪く思うのでしょうか。それとも…。

…いえ、こんなことはきっとないでしょうから、言うのはやめさせていただきますね。



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