純愛リハビリ中
彼が既婚者だと気づいたのは、ホテルで行為が終わったあとだった。
時計を何度も見て時間を確認している様子で、家で待つ奥さんがいるのだとなんとなくわかってしまった。
それに彼はシャワーを浴びるとき、ボディソープや石鹸の類は一切使っていなかったので、それも奥さんに疑われないためなのだろう。
自宅とは違う香りをまとって帰宅するわけにはいかないからだ。
「な、なにを言うんだよ…」
「まだ隠します? じゃあ、これはなんですか?」
カウンターテーブルの上に、そっと置かれた本城の左手の薬指にくっきりと残された指輪の跡を、私はトントンと指し示した。
私と会う直前まで指輪をしていたのだと、薬指の痕跡が物語っている。