純愛リハビリ中
五分前に待ち合わせの場所に着くと、戸羽さんもちょうど同時に姿を現した。
「咲羅ちゃん」
私に気づいて声をかけてくる戸羽さんは、髪をワックスで遊ばせているせいか、前よりもカッコいい。
今日も相変わらず、黒縁眼鏡の奥から覗く瞳が穏やかで優しい感じがする。
「来てくれてうれしいよ」
目を細める戸羽さんを見ながら、私も大人なのでさすがに連絡もなしに約束をすっぽかしはしない、と心に浮かんだ。
「どこに行きますか?」
「えっと……ちょっと付き合ってもらいたい場所があるんだ。実は腕時計の金具が壊れて、修理に出そうかと」
デートなのに所用に付き合わせて悪いと思ったのか、眉尻を下げてこちらを伺う戸羽さんが、少しばかりかわいらしい。