純愛リハビリ中

「今日はありがとうございました。……ごめんなさい」

「謝る必要はないよ。撃沈したのは俺が悪いんだ。咲羅ちゃん、がんばってね。自分に素直に、シンプルに」


黒縁眼鏡の奥の瞳は、最後まで優しそうに細まっていた。
彼の穏やかな人柄が、私の胸にチクリと針を刺す。

戸羽さんに対するこの気持ちは“恋”とは違うのだろうか。
そんな思考が浮かんだけれど、今の私にはやっぱりわからない。


「うまくいかなかったら、また連絡くれればいいよ。相談という名のリハビリの手伝いくらいは俺にも出来るしね」


去り際にそんな言葉を残す戸羽さんには、本当に敵わない。
器の大きい素敵な人だとあらためて実感した。

ありがとう、と思いを込めて頭を下げ、その背中を見送った。


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