純愛リハビリ中
きっとあの人は、女に暴力を振るう男がヘドが出るほど嫌いだと言っていたから、実際に殴られそうになっていた私を目にして同情してくれたのだと思う。
だから私の隣にわざわざ座って、落ち着かせるために話をしたのだ。
あの人に、下心はなかった。
なにかしらの思惑があるならば、普通の女性が引いてしまうような話題は避けるだろうし、別れ際に私の連絡先を聞かずに、「またね」なんてあっさりと帰るわけがない。
不思議な人だったし、私の会計までスマートに払う優しい人だった。
「……あんな人もいるんだなぁ」
思わず夜道でそんな独り言がこぼれた。
ほろ酔いなので冷たい夜風が気持ちいい。
もう一度彼と会えたなら本当に運命かも……などと、久しぶりにセンチメンタルなことを想像して、笑いがこみ上げた。
そんなことは起こるはずがないのに。