純愛リハビリ中
「……彰?」
「アイツだよ、バーの」
ああ、とうなずくと、八木沢さんは柔らかく笑った。
あのバーのマスターは、彰という名だったらしい。
私はあの店の常連だけれど、彼の名前は今初めて知った。
本当に見た目も名前もダンスユニットに居そうな感じだと、マスターの姿を頭に浮かべて笑みをこぼした。
教えてもらったお店はイタリアンレストランで、暖色の間接照明が多く、たしかに雰囲気がとても良かった。
「私、こういうほっこりするお店は好き」
「そうだと思った。咲羅って、ファミレスとかザワついてる場所が苦手そうだよな」
一番良いと思った部分は、他にも客はいるのに店内がとても静かなところだ。
今気づいたけれど、八木沢さんは私の名前を呼び捨てにしている。