想いを伝えるその日まで
第三話·健治の話
二人を見ていると、なんて分かりやすいんだ、と常々思う。
それなのに、信じられない。
お互いの気持ちに、気づかないなんて。
奈由は昔から純粋で、可愛い妹だった。
『溺愛』とまではいかなくても、悪い男からは守ってきたつもりだ。
こんな男には引っかかるな、こんな男の言葉は嘘だ、なんて、昔は言い聞かせたものだ。
だけど、俺にはたった一つだけ、失敗したことがある。
透――奈由に言わせると黒田さん――を、突然会わせたことだ。
なぜかお互いの交友関係には無関心で、そんな結果になった。
透はサッカー部で運動神経は抜群だったし、頭もそれなりに良かった。
何より背が高くて顔も整い、誰の目から見ても格好いい透は、女子からの人気も高かった。
そんな透に奈由が惚れる可能性があることを、気づくべきだったのだ。