想いを伝えるその日まで
案の定、奈由は透に恋をした。
きっと、透が輝いて見えたり、時間が止まったように感じたりしたんじゃないだろうか。
なぜそんなことが分かるのかというと、初めて二人が会った時に側にいた俺は、奈由のそんな顔を見たからだ。
その時の俺の気持ちは誰にも分かるまい。
目の前で、妹が親友に恋をした。
しかも、透には伝説があったのだ。
『高校三年生になるまでの間にできた恋人が二十四人の男』と。
計算すると、それは一ヶ月ごとに恋人が変わっていることになる。
さらに透は口が悪い。
そんな男に恋をしたなんて、兄として俺は心配になったのだ。
恋をするのは構わなかった。
だけど、俺は親友だからこそ透のマイナス面を知りすぎていた。
透の女性関係も、口の悪さも多分、奈由が目の当たりにしたら傷つくことがあるかもしれない。
ただ、透だってわざと傷つけようなんて、思っている訳ではない。
趣味が合い、仲良くなっていく二人を、俺はなんとも複雑な思いで見守っていた。