想いを伝えるその日まで
【今日、バイトはあるのか? 暇なら飲みに行こう。おごる。】
黒田さんのメールは、いつもシンプルだ。
絵文字は絶対に使わないし、文字数も少ない。
だけど黒田さんに絵文字はなんだか似合わないし、意外にもまめにメールをくれるから、それだけでも嬉しい。
【おはようございます!
今日は暇です。
おごってください!】
そんな黒田さんのメールに、私もシンプルに返事をした。
普段は絵文字や顔文字だって使うけれど、その時は使う気にならなかったのだ。
睡眠を遮られて、機嫌が悪かったから。
メールを返信した後、すぐに携帯電話をマナーモードに設定して、私は再び眠りに就こうとした。
だけど、なんだか眠れない。
黒田さんからの返信が気になって。
閉じようとする目は、すぐに携帯電話に向けられてしまう。
それはきっと、相手が黒田さんだからなのだろう。
結局、私は黒田さんからのメールで目を覚ましてから、一睡も出来なかった。
黒田さんからの返信はすぐに来て、待ち合わせ時間が午後二時に決まり、私と黒田さんは今、いつもの喫茶店にいる。
『飲みに行く』と言っても、私と黒田さんの場合、そこにお酒は必要ない。