想いを伝えるその日まで


「――お待たせいたしました、いちごジュースとクリームソーダでございます」


 私が未成年だし、黒田さんが超がつくほどの甘党だからだ。

 恥ずかしくて、甘い物なんて友達の前でも一人の時でも頼めない。
 頬を染めた黒田さんにそう告白されてから、私たちの『飲みに行く』は喫茶店になった。

 さて、話を戻して、黒田さんと兄の話を聞こうではないか。

「まあ……話のタネにしてやるか」

 黒田さんは組んでいた腕をテーブルに移動させ
クリームソーダを一口飲むと、語り出した。


「健治と俺は、高校で初めて会ったんだ。同じクラスで。
 だけど、すぐに仲良くなった訳じゃない。
 演劇部の健治とは、接点もなかったからな」

「黒田さん、サッカー部でしたもんね」

「ああ。だから、仲良くなったのは……高校一年の秋頃だったかな」

 黒田さんは長いスプーンでアイスクリームをすくい、口へ運ぶ。

「日曜日の図書館。
 俺が借りようとした本を、サッと奪っていった奴がいた」

 それが健治だ、と黒田さんは照れくさそうに笑った。

「……なんですか、その話は。ベタな恋愛漫画じゃないんですから」

「仕方ねえだろ。事実なんだから」

 ツッコミどころは多々あるが、案外普通だった出会いに私は少しだけガッカリした。


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