想いを伝えるその日まで


「……そんな高校時代、黒田さんはモテていたんですか?」


 その言葉を口にした瞬間、しまったと思った。

 もう少し自然な流れで聞くべきだった、と。

 実は、私が一番聞きたかったことはこれだったのだ。
 兄との話の流れでなんとか聞けるかもしれないと、期待していた。

 黒田さんは、表情を変えなかった。

 数秒間の沈黙の後、黒田さんは三分の一ほど残っていたクリームソーダを飲み干して、ニヤリと笑った。


「さあ……どう思う? 奈由の想像に任せるよ」


 私の反応を楽しむような笑みだった。

  私は一口、いちごジュースを飲む。
 甘酸っぱさが、心の中まで広がった気がした。



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