想いを伝えるその日まで
第六話·突然の訪問者
奈由と喫茶店で会ってから、三週間が経った。
三週間の内に八月から九月に変わり、風も夏から秋の色に変わった。
あれから奈由には会っていなかった。
俺は仕事がそれなりに忙しく、奈由もアルバイトや勉強が忙しそうだったからだ。
だから奈由に会えたらいいな、という期待も抱きつつ俺は今日、鈴木家を訪れた。
表面上の理由は、健治と会う約束をしたから、なのだけれど。
「あ、黒田さん。いらしていたんですか。いらっしゃいませ」
リビングで健治と他愛もない話をしていると、期待していた通り奈由が自室から下りてきた。
俺は心の中でガッツポーズする。
しかし俺には、奈由の様子がいつもと違うような気がしていた。
どこが違うのかと問われればハッキリとは答えにくいのだが、なんだかいつもより元気がないような、悩んでいるような気がするのだ。
「奈由、お前……」
「あ、二人でココア飲んでる。私も飲もうっと」
尋ねようとする俺の言葉をかき消すように奈由はそう言うと、キッチンへ姿を消してしまった。
偶然なのか、わざとなのかは分からない。