想いを伝えるその日まで
「恋人ができたら、毎日とは言いません。だけどたくさん会いたいです」
俺の胸の鼓動の速さなんて知りもせずに、奈由は理想の恋愛を語り続ける。
「……たくさん?」
「はい! だって好きだから」
なんの曇りもない笑顔で奈由は言った。
その笑顔が眩しくて、なんだか腹が立って、よせばいいのに次の瞬間、俺の口は動いていた。
「俺は……そんなに会いたくないな」
俺の一言に、奈由は一瞬で表情を凍らせた。
まるで漫画のようだ、と思った。
「え……ど……どうしてですか?」
「内緒」
わざと何かを隠すような笑みを浮かべて言ってみると、奈由は頬を軽く膨らませてから小さく叫んだ。
「……私、黒田さんの事がよくわかりません!」
「別にわかってもらわなくていいぞ」
それが、小さな言い争いの始まりだった。