想いを伝えるその日まで



 なんなんだよ、この男は。
 初めて会ってから、俺はそんな思いしか抱いていない。

 俺たちは、ソファになぜか隣同士に座らされていた。
 この男が奈由の隣に座るよりはいいのかもしれない。

 男は、日下部亮(くさかべりょう)と名乗った。
 十七歳の高校生だ、とも。

 そしてなんと、奈由と健治はこの男のことを知っていた。


「はあ? 昔隣に住んでた男? こいつ」

「だから十一年ぶり、って言ったじゃん。それよりこいつ、って失礼じゃないの? こいつ」


 お互いに指をさす俺たちを見て、向かい側のソファに座っている奈由と健治は、苦笑を浮かべている。

 健治と奈由の話によると、日下部は隣に住んでいたが十一年前、六歳の頃にアメリカに家族で引っ越した男だという。
 奈由とは二歳違いだからか、よく一緒に遊んでいたそうだ。


< 30 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop