忘れさせて 先生・・・・
二人で、資料室まで上がり、鍵を開けた

薄暗く、カーテンの締め切った部屋は大人になった今でも探検に来たようでワクワクする

「お茶します?」

そう言った、彼女は資料室の奥に案内した

資料に囲まれた中に、小さなテーブルときれいな布の被ったティーセットがある

彼女は慣れた手つきで、コンセントを入れお湯を沸かした

「紅茶?コーヒー?緑茶?」

田中は、自然な感じでオレに聞いた

「じゃ、コーヒーで」

オレも、勤めて自然に応えた

彼女は、ドリップコーヒーをカップにセットし、お湯を注ぐ

部屋中に、コーヒーの香りがたちこめた

「先生、プリント見せて」

コーヒーカップを置き、小さなテーブルの上で、オレが一晩かかって作成した授業の補足説明用のプリントを真剣に読んでくれた

「頑張った??」

少し意地悪そうに田中は、笑った

そして、高校生とは思えない的確にアドバイスをしてくれた

「教科書を棒読みしない事、受験の出題率が落ちる箇所は思いっきり飛ばす事など・・・」

どっちが先生か分からなかった

緊張感の増すオレに、田中はやさしく

「朝、食べれましたか?」

と尋ねた。情けないが全く食べれなかった事を言うと資料室の戸棚の中からクッキーを出してくれた

「二人で食べましょう」

ニッコリ笑う彼女に、つい見とれてた

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