忘れさせて 先生・・・・
その タバコの煙の先を追うかのように 遠い眼差しをしながら 菊池先生は 話を続けた

「真人は、なんか 気持が どこか 遠くに有るかの様な 感じだったの 若い頃・・・・ うまく表現出来ないんだけど 自分の気持に 気付かないようにしてるって感じかな・・・・」

「大学時代 何人か彼女とかも 居たけど 恋に溺れるとか どんな感じじゃなくて 相手が 真人に夢中で なんとなく 付き合ってるって 感じだったの。 もちろん 別れるときも 相手が 離れたら 追いかける事もなく THE END って感じかな」

そう 話すと タバコの火を 灰皿で 消した

そして 私の 目を 捕らえた

「そんな 真人が 結衣ちゃんとの恋愛には、今までとは 全く違ってたの・・・」

「なんか 必死って感じがしてた。医局で 本当だったら 横になりたい位 疲れてても 非常階段の所で 携帯握り締めて 嬉しそうに 電話してるの。私が、『大変ね 若い子のお相手も・・』って意地悪言った時、『そうだな 大変だよ』って 凄く 嬉しそうに 答えてた その時の 真人の顔 もう10年近く 知ってるけど 初めて 心からの笑顔を 見たってぐらい 嬉しそうだった」

そう 話ながら 菊池先生の 瞳が 光った



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