忘れさせて 先生・・・・
玄関を出て スロープを降りながら 真人の車が 視界に入った

何も 変ってない 真人の 車・・・

別れた事を 忘れ 時が戻った様に 錯覚を覚えてしまう

助手席に 乗ると 優しい 真人の顔が 見えた

「結衣」

そう 呼ぶと 真人の 左手が 私の 手を掴む

その 手を じっと見つめていた

薬指の リングが 見つからない

真人は、手を握ったまま ゆっくりと 車を 発進させた

あの時と変らない 無言の時間

決して 苦痛にはならない

「結衣 俺さぁ お前が そうやって 窓の 外 眺めてる時の 横顔が 好きだった」

私は 自分の 顔が 熱くなるのを 感じた

「指輪 どうしたの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ごめん 私の為に外してくれたんだよね ごめん」

「そうじゃない 指輪は 病院内でしか してないんだ・・・・・ 教授に見られた時言われるのがイヤだから」

「そんな・・・・・・・・・・」


  
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