忘れさせて 先生・・・・
私は、携帯を置くと

電子レンジの中で楽しげに回るグラタンを見た

簡単すぎる夕食を終え、また机に向かう

私の今の成績は努力の上に成り立っていた

決して天才ではない・・・

気が付けば、時計の針は1時を指していた

外で、車の音がした

暫らくすると、玄関を開ける音

「ただいま~♪♪」

かなり酔ったお母さんが帰ってきて

「ご機嫌ですね~」

からかう私に、お母さんは抱きつきハグをした

「大好き♪ 結衣ちゃん~」

ハグした手を離し、リビングのソファーに横になるお母さんを私はかわいく思った

仕事では完璧に見えるお母さんも、悲しみや苦しみを隠して戦っている

彼女は、未婚で私を産んだ

好きだから、好きな人が望んだ子だから・・・・

ある企業の社長をしている父と出会い、恋をした

私の父親には、別の家庭があった

そして、私が4歳の時に愛する人を失った

彼の遺産で、お母さんはアメリカへ留学した

彼女はアメリカの大学でMBAの資格を取得した

私は4歳から14歳までの10年間アメリカで暮らした

寂しい思いをする事は、少なかった
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