忘れさせて 先生・・・・
期末テストの時期が近づいてきた

昨年のテスト問題が見たくて、資料室へ向かった

資料室の鍵を開けようとした時、鍵が既に開いている事に気が付いた

そっと中を覗くと、窓辺から外を眺める田中の後姿が見えた

声を掛けようと中に入った

田中の、肩は小刻みに震えていた

オレが入った来た事に気付いても、その肩の振るえは止まらなかった

オレは、窓際に向かって歩いた

そして、泣いている田中の肩をそっと抱きしめた

彼女の手が、オレのYシャツの袖をしっかっり握り締めていた

そしてこちらを向いて、オレの胸に体を預けた

オレは、強く彼女を抱きしめた

何も聞かず、何も話さず・・・

どれぐらいの時間が過ぎただろう

田中の震えていた肩は、落ち着きを取り戻した

さっきまで見えていた夕日は、もう見えない

代わりに、冬の月が少しづつ 色を美しくしていた

「大丈夫か?」

「うん、大丈夫」

強く握っていた田中の手が、オレのYシャツから離れた

「送ってくよ」

と呟くオレに、無理した笑顔で

「大丈夫」

と答えた
< 35 / 266 >

この作品をシェア

pagetop