忘れさせて 先生・・・・
助手席に田中を乗せ、車を出した

「吸ってもいい?」

「うん」

「池山先生、タバコ吸うんだ」

「学校じゃ吸わないけどなぁ」

おれは、窓を少し開け、タバコに火をつけた

無言の時間が流れた

「お前の家どこら辺?」

「この交差点右に・・・」

田中の横顔を、じっと見つめてしまう

「なんで泣いてたか、聞かないの?」

「話したい?」

「どうしようかな?話したら楽になるかな~」

「お前が、本当に話したくなるまで待つよ」

彼女の家まで10分ぐらいの時間が、オレが今まで味わったことの無い大切な時間に感じられた

「先生、ここでいいよ。ありがとう」

車を停めた

ドアを開け降りようとする田中の手を、強く握った

田中は、少しキョトンとした目でオレを見ている

ポケットから、手帳を取り出し 自分の携帯番号を走り書きした

「いつでも、いいから」

「ありがとございます。 おやすみなさい」

彼女は、何事も無かったかという様に車を降りた
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