先生と恋をしました。
「お前相変わらずひどいなあ…
本当だってこと証明してやるよ…」
「…えっ」
突然手を握られて彼の胸にその手が置かれた。
私の手に伝わる彼の鼓動…
そのまま彼の手が私の頭に伸ばされ抱きしめられているような状態になった。
私の頭を彼は自分の胸に押し当てる。
「…わかるか?俺の心臓うるさいだろう?早いだろ?」
彼の胸の中にいる私…
胸に耳が当たり彼の鼓動がはっきりと聞こえていた。
リズムよく、一音ずつはっきりとなる心臓の音…
少し早くて、音が大きい…
そんな彼の音を聴いて目を瞑る…
なんだか心地いい…
あまりにも大きい音にびっくりして顔を上げて先生を見つめた。
「…なぁ?わかっただろ?俺今すっごく緊張してんの!」
「…それと、その角度キスしたくなるからやめてくれ…」
「…えっ、あ、あ、ご、ごめんなさい…」
その言葉に慌てて先生の胸から離れた。
「これでわかっただろ!俺がお前に本気だってこと!」
まだ信じられない…
今私は藍沢先生に抱きしめられていた。
しかも藍沢先生は私が好きだと…
なんで私なの!
「…あのー、私は先生のことは…」
「ん?」
「私は先生のこと…嫌いです!」
「えっ?告白そうそう振られるの俺?」
「…いえ、振るとかそういうんじゃなくて…」
「んじゃないんだよ!」
「私、先生の……声だけは好きです!」
「…はぁ?」
「……先生のことを好きになるかはわかりません。
でも今は嫌いです。だから…!」
「今は嫌いでも、俺はお前を絶対に好きにさせてみせる!
俺に惚れさせてみせる!」
「…私はずっと恋なんてしたことありません。
将来は見えてるから…
無駄な抵抗はしません…だから…!」
「それなら俺がお前に恋っていうのがどんなものか教えてやる!
俺に夢中にさせてやる!」
ずっと恋なんて、無駄になるだけって想い続けてきた。
将来は政略結婚が運命なんだから、無駄に恋をして自分を傷つけたくなくて…
恋をすることをやめていた私に彼はこういった。
これが彼と私の恋の始まりだった。
「これからは俺だけを見てくれ。絶対に惚れさせてやるから!」
「…私は絶対に藍沢先生のこと好きになったりしませんから!」
「…宣戦布告だな!上等!
待っとけ、高瀬遥佳!」
「…すいません…今日は帰らせていただきます。失礼します。」
机の横に置いておいたカバンをとり逃げるようにして準備室から逃げ出してきた。