あなたの隣ってあいてますか?
樹くんは、磯田さんと手を繋いで歩いている。
「ちなっちゃんの家はどの辺なん?」
「ここから、10分ぐらいなんですけど、アカイスーパーの裏手です」
「ああ、その辺か…うちは、アカイの表側やから、近いな」
「ホンマですね…
え?もしかして、磯田クリニック?」
「そうそう!そこ!」
ってことは…磯田さん…
「お医者さん?」
「一応…」
「小さい頃、よく行ってました」
「そっか…俺が継いでから、まだ5年ぐらいやからな…最近来てないやろ?」
「はい」
「親父、目が見にくくなったって引退したんやけど、引退してから、マラソンしたり、ジム通ったり、余生を楽しんではるわ…」
「そうなんですか…懐かしいな…一回、5歳ぐらいの時に高熱出して、夜遅くに先生に診てもらったことがあります。先生、お元気なんですね」
「うん。65歳には見えへんぐらい元気」
「じゃあ磯田さん、小学校は第一小学校?」
「そう。樹も一小」
「中学校は一中?」
「そう。ちなっちゃんも小学校も中学校も同じ?」
「そうです」
「年いくつやった?」
「27です」
「ほな、全くかぶってないな…ハハハ…俺、35やし…」
「ホンマですね…
樹くん、学校は楽しい?」
「まぁまぁかな?」
「すいません、近いのに送っていただいて…このまま帰られるんですか?」
「いや、俺主役やし…
樹、家に連れて帰ってから、もっかい行くわ」