あなたの隣ってあいてますか?



早めに咲良の家を出た。

帰る時には、寒気がするぐらいになっていた。

家に着くと、身体が火照っているのがわかった。

「ただいま」

「お帰り。ん?ちなつ、顔赤いで。熱でもあるん?」

「うん。熱っぽい…」

「体温計っとき」

私は、母に言われるままリビングで熱を計った。

「貸して。あら、38.0℃…」

「…」

「まだ、19時30分やし間に合うわ。磯田さん行こう」

ダメ!

磯田さん…磯田クリニックは…

「え?磯田クリニックはあかん…」

「近いからあそこにしとき。小さい時はいつも磯田さんやったんやから!お父さんもお母さんも、磯田さんにお世話になってるんよ」

「知ってるけど…ゴホン…ゴホン」

「お母さん、連れてったるから!はい、行くよ」

これ以上、否定する元気もなく、母に言われるがまま、私は磯田クリニックに連れて行かれた。

母は、車を駐車してから、「終わったら連絡して。迎えに行くから」と、帰って行った。

磯田クリニックに入ると、 閉まる時間が近いせいか、人は少なかった。

受付をすると、「こちらの問診票に記入していただけますか?」と体温計と共に渡された。

この受付の人綺麗な人…

磯田さんに診てもらうことに少し緊張している自分がいる。


< 53 / 70 >

この作品をシェア

pagetop