あなたの隣ってあいてますか?



待合室には私一人だった為、たぶん、私が一番最後の患者なのだと思う。

「伊原ちなつさん、中へどうぞ」

看護師さんに呼ばれ、私は恐る恐る中へ入って行った。

「あ、やっぱり!!ちなっちゃん」

「すみません。遅くに…」

磯田さんは、バレーボールの時とは違って、白衣を着ているせいか、お医者さんなんやって改めて実感した。

「なんで、謝るん?まさか、ちなっちゃんが来てくれるなんてな…俺は嬉しいよ」

「ありがとうございます」

「熱か…喉診るから、大きく口開けて。う〜ん…扁桃腺は腫れてないわ…じゃあ、胸の音聞くから…」

胸の音…

どうしよう…

なんか、ドキドキしてる?

ドキドキしてるのバレるよ!きっと。

「はい、大丈夫。風邪です。薬5日分出しとくね」

「はい」

お医者さんに言われると安心する…

磯田さんやからかな?

「あっ、そうや!樹が、かなりちなっちゃんのこと好きみたいや。早く会いたいらしい」

「本当ですか?なんか嬉しいです」

「帰り、足あるん?」

「あ、はい。連絡したら母が迎えに来てくれます」

「俺も午後診終わったし、送ろうか?」

え?送ってくれはるんや…

やっぱり、磯田さんは優しいな…

「でも…お忙しいのでは?」

「心配せんでも大丈夫」

「あ、はい」

「会計終わったら、玄関で待ってて」

「はい…」

私は、会計を済ませて磯田さんを待った。

すると、受付をしてくれた女性が…

「あの〜もう閉まる時間なので出てもらっていいですか?」

「あ、はい」

「ちなっちゃん。こっち来て。靴持って来てな」

磯田さんが、白衣のまま私を呼んだ。

「え?先生の知り合いの方ですか?」

「うん。そう」

受付の人に「何なん?この子?!」みたいな目で睨まれた…

怖っ…

磯田さんに気があるのかな?

綺麗な人やったな…


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