あなたの隣ってあいてますか?



佑は、ウチの家の間取りを知っているので、先にスタスタとリビングへ向かい、ちゃっかり父にも挨拶をしていた。

「久しぶりやな〜元気にしとったか?」

「はい。お父さんもお元気そうですね」

「ああ、年には勝てんけどなぁ〜」

と、さすが上手く会話してる…

「ちなつも帰ってたんか…」

「うん。ただいま」

「佑大くん、ビール飲むか?」

ビール?飲まさないで!絶対、「ごはん食べていき」みたいなことになるやん!

「あ、じゃあ、お言葉に甘えて」

「「乾杯」」

やっぱり…

「ただいま。おっ、久々にやってるね。佑大くん、ごはん食べて行って!今日、お鍋やから」

やっぱり…

はぁ…

佑は、両親とか上司とか先生とか先輩に媚を売るのが上手いから…

高校の時もそうやった。

頭がいいし、スポーツも万能、先生や先輩に好かれてた。

私は、そんな佑に振り回されてた。

同じクラスの女子に…

「ちなつがうらやましいわ」

隣のクラスの佑のファンクラブ会員に…

「佐山くんと別れてくれへん?」

英語の先生に…

「伊原なんや!このテストの点数は…佐山に勉強教えてもらいなさい」

羨ましがられたり、ケンカ売られたり、比較されたり…

高校時代は、それが日常茶飯事だった。

佑と付き合っていた時のことを思い出した…



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