あなたの隣ってあいてますか?
担任の先生は、席替えが好きで1ヶ月ごとに席替えをする。
この日も、席替えが行われた。
結果、佐山くんとはかなり離れた席になった。
物を貸すことが減ったが、目が合うことが増えた。
それから、一週間が経ち部活を終えて咲良と自転車置き場に向かう途中に、一つ年上の吹奏楽部の先輩に呼び止められた。
「伊原、ちょっといい?」
田中圭介(たなかけいすけ)先輩だ。
「はい。咲良、先帰っといて」
「うん」
なんやろ?
また、田中先輩って…
「伊原、今、付き合ってるやつとかいる?」
「え?あ、今ですか?いませんけど…」
「俺な、伊原が吹奏楽部入って来た時から好きやってん」
「え?ほんまですか?田中先輩って、雅子先輩と付き合ってはったんじゃないんですか?」
雅子先輩とは、今井雅子(いまいまさこ)さん。
吹奏楽部では、かなり話題で絶対に付き合ってるって言われてた。
「ああ、今井とはなんもないねん。皆がそう言ってるだけで、今井は、他校に彼氏おるし…俺は、伊原が好きやし…」
「田中先輩、あの〜付き合ってる人はいないんですけど、好きな人はいるんです。だから、すみませんが、お断りさせていただきます」
「あっ、そうなん?」
「すいません。急ぐんでいいですか?」
なんで、なんで今なん?
佐山くんに見られたら嫌やな…
「伊原!」
「佐山くん?!」
「どうしたん?顔色悪いで!」
「いや、なんでもない…」
「なんかあったんやろ?」
そんな顔色悪いんかな?
佐山くんに帰りながら、さっきの田中先輩のことを話した。
「告られたん?まじで?」
「うん。別に先輩が嫌いやったわけではないんやけど、なんか急すぎて混乱してた」
「で、OKしたん?」
「するわけないやん!好きじゃないのに」
「じゃあ、好きな奴やったら、OKするん?」
「そら〜好きなんやから、OKすると思う」
「ちょっと、伊原、歩かへん?」
「え〜?自転車押すの?」
「いいやん!たまには」
「うん」
しばらく自転車を押して歩いた。