恋も試合も全力で!


「だけどね、あの頃の裄くんは、バドミントンしか見えてなかった。小さい子がゲームに夢中になるように、裄くんはバドに夢中になってたの。
そんな裄くんを、あたしはずっと見てたよ。
中学生になっても、ずっと」


加藤さんの宣戦布告にも聞こえる、この言葉。

だけどあたしは、黙って耳を傾けた。


「あたしが中学3年の時、裄くんが引っ越しちゃってね。それからは、1回も会ってなかった。
そしたらね、自然に気持ちが無くなっていったの」


そう言うと、
加藤さんは優しく微笑んだ。


「あたしの好きは、ただの憧れだったみたい。
今は、彼氏しか見えてないから。安心して?」


あたしは、何を不安になっていたんだろう。


仲良さそうに喋ってたから。

下の名前で、呼んでいたから。


それだけで、今まで裄がくれたものも、全部忘れてた。




< 396 / 463 >

この作品をシェア

pagetop