恋も試合も全力で!


ゆっくりと綾子を抱き寄せた槇は、震えた声で言った。


「泣くなって……俺まで泣きそうになるだろ」


そう言った槇の目から、涙が一筋流れた。


「ま、き………行か、な、いで……」


くぐもった綾子の声。

あんなに強く見せてたけど、本当はすごくつらかったんだ。

本当は、槇と離れたくないんだよね。


「綾子っ……」


そんな綾子の言葉を聞いて、槇の抱きしめる力は一層強くなった気がした。


「絶対、迎えにくるから。
何年後になるか分かんねーけど、綾子を守れる自信がついたら、絶対に迎えにくる。
それまで、待ってろ」

「う、ん…待って…る……」


槇と綾子は、ずっと抱き合って泣いていた。

槇の涙を見るのは、初めてだった。




< 455 / 463 >

この作品をシェア

pagetop