偽りの愛に溺れる。
それから数時間が経った夜八時、仕事が終わり、会社から出て電車に乗って、家の最寄駅を歩いていた。
前に若い女子達が歩いている。
「汐音、ありがとう、本当に助かったよ~」
ん? この声は……琴菜!?
そう、なんと前方を歩いているのは琴菜だった。
俺は足を早めて、琴菜の方を掴んだ。
琴菜がこっちに振り返って、驚いた顔で俺を見た。
「えっ!隆志さん!! なんでこんな所に!?」
「そのセリフこっちが聞きたいよ。なんで琴菜がこんな所にいるの?」
「あのね…ここ汐音の最寄駅なの」
汐音? ああ、隣にいるポニーテールの女の子か。どうやら琴菜の友達のようだ。
「琴菜の彼氏さんですよね、あたし琴菜の友達の山中汐音です。
ごめんなさい、今日琴菜と放課後ちょっと遠くまで遊びに行ってたんです、それで遅くなったからあたしの家に泊まることになって…」
え、ちょっと今何て言った?
泊まる…だと?
「隆志さん、今日は汐音の家でもいいかな?」
琴菜が上目遣いでこちらを見てくる。
…そんな顔されたら断りづらいだろうが。
「ああ。楽しんでこいよ」