復鬼【短編】
真実
緊張しているのだろうか、額から汗が止まらない。
父親は知らないが、唯一顔を知り、血の繋がっている肉親の母親を殺しに行くとなれば容易な事ではない。
この震える手の指を動かせば。
確実に死ぬだろう。
それは恐る恐る木で出来た扉を叩く。
すると聞き覚えのある声が響き顔を覗かせた。
「はい。どなたでしょ....!?」
ソレの母親らしき女性が扉からでてくるなり、ソレの名を呼びソレに抱きつく。
「よくここが解りましたね..」
「っ....離して!」
ソレは母親を引き離し、思った。
何故、自身を捨てたにもかかわらずこうやって平気で抱擁を交わそうとするのか。
自分が嫌い。
自分が憎たらしい。
ヒトとは違った髪の色。
ヒトとは違った赤い眼。
だから自身の目の前から去ってしまったのではないかと。