復鬼【短編】
「聴きたいことが有ります。なぜ俺を捨てて男となんか...。皆と違うこの白い髪。皆と違うこと赤い目。そのせいで俺がどんなに...」






ソレは初めて涙というものが自身の頬を伝っていることがわかった。

母親は少し黙ると真意を口にした。


「ごめんなさい。ごめんね..辛かったね。貴方が私を恨むのは当然よね。違うの、本当は.......」



その続きを言う前に母親がドサリとソレの前で崩れ落ちる。
死んではいないまだ息ある。


"遅い。無駄話が過ぎたな"




先ほどまで静かだった奴がソレの身体を一瞬で乗っ取り、母親を殺めようとしている。



今にも母親の息の根を停めようと腕をのばそうとするがその腕はソレによって止められている。


"!!"



「本当はっ..貴方の中のっ。鬼を殺すために..はぁっ。鬼払い様に頼み込んでいたのよ..」



息が荒いなか真相を言い続ける母親。


鬼とはこいつの事なのか、いやコイツに間違えは無い。



これで判った。
自身と奴が何故母親を殺したいのか。

鬼払いによって消えたくないと言う奴の意志。



「と云うことは...父さんが鬼...?」



「やはり..中にいたのね。ごめんね..なにも云わないで出て行ったりして...。そう、貴方の父さんは鬼。
人間と鬼、...二つのものが1つのものに成りきれず、ひとつの身体に両方の意志が宿ってしまった。ただ、鬼の力は凶暴過ぎる...」




"だから..俺を消すと?"




「この力、自分に使ったらどうなる?」




"ふざけるな、そんな事させ.....ぐうっ!?"




瞬間ソレは自身の腕を切落し、自身の血を横目で見る。


「お..れは、お前。お前は俺。..だから!死ぬ時も一緒だ!!」



"冗談はよせ!!お前と俺なら何千人いや!何万人だって殺れる!!"




いつも落ち着いて問い掛けてくる奴とは違い、自分が消えてしまうことに焦っているのか、早口に言葉をつづっている。




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