◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
◆新居
7月下旬の日曜日。
その日は、朝からとても暑い日だった。
真夏を思わせる強い太陽の光が、アスファルトをじりじり焼き付け、見る物全てをゆらゆらと揺らす。
遠くでは、気の早いアブラゼミが忙しなく鳴いていた。
湿気を含んだ、むっとした空気が体中にまとわりついて、全身に汗を噴き出させる。
そんな昼下がり。
「うわぁ、なんだかボロっちーね、このアパート」
私、坂田美鈴は、汗で滑りそうになる両手の大荷物を抱えなおしながら、新居アパートの玄関ポーチで建物全体を仰ぎ見た。