◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
視線の先には、大分年季が入った見るからにボロい集合住宅がそびえ立っている。
元はアイボリーだったのだろう。
モルタルの壁は薄茶色にすすけていて、所々細かいひび割れが黒い蜘蛛の巣状に走っていた。
サッシも、アルミ色のシンプルなもので、洒落っ気の欠片もない。
なんだか、がっかり。
もうちょっと、小綺麗なアパートを期待していたんだけどなぁ。
建設会社の現場監督をしている父の仕事の都合で、とある山あいの町に引っ越ししたのは高校2年生の夏休み直前。
社宅として使われている、古ぼけた4階建てのアパートの302号室。
ここが、父・母・娘の私。
3人家族の新しい住まいだった。