◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
◆家鳴り
「……家鳴りかな。このアパートもかなり古いからね、あちこちガタが来ているし」
政志さんが、天井を見詰めながら目を細める。
その声音は何処か『腑に落ちないと』言うニュアンスが含まれていた。
彼自身も、あの音の正体が掴めない、そんな感じだ。
「家鳴り、ですか?」
私には、初めて耳にする単語だった。
「ああ、多分。でも……」
「でも?」
「いや、何でもないよ。そんなに気にしなくても大丈夫。いくら古くても、建物が崩れるなんてことはないからね」
――あはは。それは笑えないよ。
私は、年季の入ったアパートの外観を思い浮かべて、思わず笑顔が引きつってしまった。