◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
「じゃ、俺たちは、これで」
しばらく他愛のない話しに花を咲かせた後、キリが良いところで、政志さんが腰を上げた。
それに次いで真次くんも、立ち上がる。
私は、ガタンと椅子を鳴らして、慌てて立ち上がった。
「あ、今日は、ありがとうございました!」
そう言って、ペコリと頭を下げる。
「どういたしまして。何か困ったことがあったら、家は上の階だから、気兼ねなくおいでね。俺は仕事で夜遅くならないと家に帰らないけど、真次は多分暇だから」
「あ、兄貴!」
政志さんがニコニコ、含みの有る笑いを浮かべているのに対して、今まで無愛想だった真次くんが表情を動かした。
少し顔を赤くして、怒ったような顔をしている。
へえ、ムキになったりするんだ。
根暗って訳じゃないのね。
私は、彼の意外な面を発見して、少し嬉しくなった。
これから数年間はご近所さんで同じ学校に通うんだから、付き合いやすい方がありがたい。