◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
「あの、もしさ……」
「え?」
帰り際、玄関で靴を履き終えた真次くんが、言いにくそうに口を開いた。
「もし何かあったら、遠慮しないで来いよな」
ぶっきらぼうに、ボソリと呟く。
「うん、ありがとう。そうする」
なんだ、けっこう良いヤツじゃない。
私は、自分を気遣う言葉を嬉しく感じた。
真次くんとは、何だか仲良くなれそうな気がする。
「あのさ」
「はい?」
「俺は先に、戻ってるぞー」
尚も何か言いたそうに玄関に佇む真次くんに、政志さんが幾分からかいを込めた声をかけた。
そのまま手をヒラヒラ振りながら、階段室の方へ歩いて行ってしまう。