◆ナイトメア~引っ越し~【ホラー短編】
「坂田さん家って、何教?」
「はい!?」
何を言い出すのか、『まさかいきなり告白でもないよね?』と、内心ドキドキしていた私は、予想外の真次くんの質問に、素っ頓狂な声を上げてしまった。
なに?
真次君って、宗教の人なの?
思わず身構える。
そんな私の心の内を知ってか知らずか、真次くんが真剣な眼差しをむけてくる。
「あ、仏教だけど……、宗派は、なんだっけかな?」
答える言葉も、しどろもどろになってしまう。
「何かあったら、その宗派の念仏を唱えな」
はい!?
念仏って、ナムアミダブツとか言うあれ?
いったい何の話しだろうと一生懸命考えを巡らせるが、納得出来る答えに行き着かない。
「じゃあ、明日」
クエスチョンマークが脳内に飛び交う私などお構いなしに、真次くんはそのまま、きびすを返してすたすた歩いて行ってしまった。