みすみの花が開くとき
学校を出て、最寄駅とは逆の方向に歩いて10分の、神社や動物園の入った広大な公園を抜け、少し。





《Luchs-Nebel》




席につく。

店内を見回す。

クリームがかった白で統一された内装をやわらかい黄色の照明が包んでいた。


「英兎、よく知ってたな、ここ」

「えへ。知り合いのお姉さんが居るんだ」

「へぇ…」


花月さんが、こんなに近い…。


「…あ、あたし、飲み物取ってくるね。

行こ、柾?」


雪は柾の手を引いて席を発った。





…モヤモヤ…。





「気になるぅ?」


僕って、そんなに判り易いか?


「…別に」


英兎はくすくすと笑っていた。


「素直になりなよぉ」


…ムカつく。


「…花月さんと柾って、どういう関係?」


英兎はにたり、と笑った。


「むふ。答をあげるよ。

雪ちゃん…花月さんはね、柾の大切な人だよ」


身体中の力が抜ける。




─《親友は恋敵》─





信じたくなかった。




…モヤモヤ…。





諦めるしか、ないのかな…?





英兎はくすくすと笑っていた。

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