みすみの花が開くとき
「あのベンチの裏だから」


林を指す。


「…あの林の中の?」

「そう」

「立入禁止とかじゃない…?」


どうだろう。

前回は、そんなの気にしてなかったし。


「大丈夫」


…だと思うけど。


「行こ」


大丈夫、だよな?





林を進む。

誰にも注意は受けなかった。


ベンチ。


壁づたいに裏手に回る。


《Lievre》


扉を開ける。


「…あれ、ここ…?」

「うん」

「…ここって…」


店主が顔を出す。


「やあ、近衛君。いらっしゃいませ。

…お、雪ちゃん。いらっしゃい」


《雪ちゃん》?


「ここって、…英兎くんのお父さんのお店…」



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