みすみの花が開くとき
「英兎の、…お父さん?」

「近衛君は、英兎を知ってるのかい?」

「はい。中学から」


店主は納得したように頷いた。


「あぁ、なるほどね。

瑛とは、英兎が中学に上がる少し前に別れたんだ」

「瑛?」

「あぁ、妻の名前だよ」

「英兎って、名字変わってたんスか?」

「いや。私は婿でね。あの子の名字は変わってないよ」

「はぁ…」


聞いちゃ、マズかったかな?


「あぁ、そういえば、名乗り忘れていたね。

烏丸玉兎です。よろしく」


慌てて、名乗り返しかける。


「からすま…ぎょくと」

「変わった名前だよね。鳥と似てる方の烏に、日の丸の丸、玉手箱の玉に、英兎と同じ兎だよ。読み方は違うけど。

あの子は《えいう》だね」


文字にすると、ややこしいな。


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