みすみの花が開くとき
「花月さんは、ここ、知ってたんだよね?」

「うん…」

「林見ても、気付かなかったよね」

「…あんな道、初めてだったし…」


まぁ、道ですら無いしなぁ。


「普段から、ここには来てる?」

「…たまに」

「いつも、どうやって来てるの?」


雪は不思議そうな目を向けた。


あ。やっと、目ぇ合った。

…のは嬉しいんだけど、もう少し、心臓が大人しいと、助かるな。


「…気付いてないの?」

「何に?」

「《Luchs-Nebel》って覚えてる…?」

「入学式の日に行った店?」

「そう。…で、ここは、そこのはす向かい」


はす向かい、…斜め前?

なんで、気付けなかったんだろ。

< 115 / 307 >

この作品をシェア

pagetop