みすみの花が開くとき
かちゃり。





再び耳にする、ためらい無く扉を開ける音。

顔を出す、茶髪の少女。


城戸さん…。

顔と名前は覚えたよ。


都は周りを見回した。

気付かれる。


「おはよ、城戸さん。今日は、花月さんを追い出す手間は無いよ」

「…おはよ」


都は気まずそうにうつむいた。


「近衛くん…。気付いてたの?」

「風の噂に」


我ながら、古くさい言い回しだ。


「どこまで?」

「え?」

「どこまで、知ってるの?」


全部だよ。


「花月さんがあそこに居たって事しか」



屋上の入り口の上を指す。

都は胸を撫で下ろした。





城戸さんがこれからなんて言うかで、断り方、変えないとなぁ。





…僕は、花月さんが好きだから…。


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