みすみの花が開くとき
身震い。

緞帳が上がる。


暗いな。…夜?


飛び起きる。

膝に毛布。


なんだ、誰がかけたんだろ?

起こしてくれればいいのに。





空を見上げる。






息を呑む。


なんだ、これ…。





─林の雄大さを引き立たせる、絶妙のアングル─






─月の邪魔にならない程度に添えられた雲─




─月に主役を譲るかのように、ぽつりぽつりと小さく輝く星─





─本当に深く、暗い夜空─





─そこに白く輝く月─




「キレイだ…」


カメラを持っていなかった事を後悔した。

携帯電話を取り出す。

カメラ機能を呼び出す。


早く、早く!


携帯電話を構えた時、雲が月を隠した。


口の中で舌打ち。





月は変わらない美しさをたたえていたが、同じ月は二度となかった。

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